店長– Author –
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BullPiano
ある町にて。 ピアノの音に誘われて、半開きになっていたドアからそっと中を覗いたら、ほわっと暖かい空気と共にパンを焼くいい匂いが漂ってきた。ランチには遅く、ディナーにはまだ早い時間。薄暗い店内には、休憩中の二人がいた。一人がピアノを弾き、も... -
月面のカメレオン 3
ジョアンのアトリエからのつづき そこは小学生から高校生まで、様々な家庭の事情を持つ子供たちがものづくりを体験し学ぶアートスクールだった。 校長先生と話をした後、私はセージョが受け持つクラスに連れて行ってもらった。私も子供たちと机を並べて絵... -
月面のカメレオン 2
リオからのつづき リオデジャネイロから高速バスに乗り、陶芸家たちが暮らす谷がある州の州都に着いた。バスターミナルから市内へ行き、町で情報収集を開始した。 リオデジャネイロの滝でカメレオンから得たキーワードのとおり、なるべく決めないことを決... -
月面のカメレオン 1
はじまりはリオデジャネイロ 毎週水曜日はチジュカ国立公園で登山道の整備など、森林ボランティアをしていた。 その日はスケジュールを間違えたのか、いつもの集合場所に誰も来ず私一人だった。しばらくして待つのをやめ、数日前に教えてもらった滝にもう... -
クジラが来た
今朝は晴れたので、カゴいっぱいのシーツを洗濯するところから1日が始まった。 電話が鳴った。 時々行く仕事先の先輩で、今から来ることになった。 お湯を沸かして待っていたが予想より遅かった。道を間違えたらしい。 コーヒーを淹れて、テラスで今年のシ... -
おにぎり
旅立ちのおにぎり。 生まれてからこれまで何個おにぎりを食べてきただろう。 ふとした時に思い出すおにぎりが二つ、いや三つある。 人にはそれぞれ、そういう食べ物や飲み物が、人生の中にポツポツあるのかもしれない。 ブラジルの地方都市、たくさんの人... -
ネオンデルタール
ある日、ネオン管で看板を作ろうと思った 毛のない猿 (ワタシ) の通って来た道に、勝手に看板を掲げる ワレワレハ ドコカラキテ ドコヘイクノカ 毛のないサルになっても、人類の旅は続く ボートがアマゾン川に浮かぶ島に到着した。島の中を歩き集落に入った。... -
まわる記憶、まわる電車、まるい指輪
スイスに住んでいた時、たくさんの人からたくさんの友情、返せないほどの親切をもらった。 そこは小さくて、緑が豊かで何もないけど何でもある町だった。 映画館もスーパーも大きな公園も病院も駅も図書館もどこにでも歩いて行くことができた。路線バスが... -
ごめんなサイ
ある時、友人に謝りたいと思った。 けど、うまく言えるかわからなかったので、サイの絵を描いた。 割と気に入ったので、陶芸でも作った。 空気が残っていて、窯の中で爆発した。 ゴメンな、サイ。 学生の頃、友人が「俺ら怒るの下手やから、怒る練習をしよ...
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